「疲労骨折?」
酷く痛がって唸る季蛍さんを、高島が抱えて連れて来た。
「かもしれません」
診察室のベッドに体がゆっくり下ろされたが、季蛍さんは高島の白衣の裾を強く握りしめたまま離さない。
「昨日は診たの?」
「嫌がったので」
「…そうか」
喘息の咳で疲労骨折…
よく耳にすることだけれど、実際そうなった状態は頻繁に見ることは少ない。
嫌な咳が止まることなく続き、高島が背中をさすっている。
「体起こす?」
高島の問いに季蛍さんがほんの少し頷き、壁に寄りかかるようにして上半身を起こした。
「どこが痛い?触れるだけでいいよ」
季蛍さんの手は、ゆっくり胸下に当てられる。
位置的に見て肋骨だ。
痛がり方も酷い様子だし、最悪折れていることだって有り得る。
「ちょっと触ったり…ダメかな?」
「……。」
季蛍さんは気にする様子で高島の様子を伺い、なんとも言えない表情。
「俺が見なきゃいい?」
その言葉に季蛍さんが頷くので、苦笑した高島がその場を離れて行った。
どうしても高島の診察を避けたいようだけど…。