しばらくして蒼先生が部屋に現れると、季蛍は俯いて白衣の袖で涙を拭った。 「で?…苦しくて泣いてるのか」 季蛍の隣に腰をかけて、俯く季蛍を見つめる蒼先生は、多分泣いている本当の理由がわかるんだろう。 俺にも想像がつくように。 「苦しく…ない」 「じゃあ涙、何で出る?…」 「出てない…ッ」 白衣の袖で何度も涙を拭って、季蛍は顔を上げようとしない。