午後の外来へ向かおうと廊下を歩いていると、前から見覚えのある男性2人が歩いてくる。
顔を合わせることは、できれば避けたいことなのに。
朝私よりも先に家を出ていたから、すれ違いになれば声を掛けてくるかもしれない。
できるだけ廊下の端に寄り、俯き加減でやり過ごそうと思ったけれど。
その行動は裏目に出た。
「季蛍」
袖を掴まれ、冷や汗が出る。
「…なに?」
「何で目逸らす?」
「逸らしてないじゃん…」
「正確には気が付かないフリ」
「…してないもん」
「気になるだろ、目の前で顔逸らされたら」
「顔逸らしたくらいで呼び止めないで…」
「俺と顔合わせたら都合が悪いんだろ?」
「全然…ッ、そんなことないから」
図星なのがちょっと悔しくなって、バッと顔を上げたけど。
「あんま無理すんなよ」
そう言って髪をひと撫で。
「…ッ」
「ふふ…、真っ赤。季蛍さんは素直だよね」
港くんにまで笑われる始末。
「昼休みも心配してたよ、季蛍さんのこと」
港くんが蒼を指さし言うと、蒼は港くんの背中を押しながらそのまま去っていった。