「愛香」
肩を叩かれて顔を上げると、奏太の手には洋服が。
「着替えて」
「…だいじょうぶ」
「大丈夫じゃないから」
飛ばしそうになる意識を戻すと、ぐっしょりと汗で濡れた服の感触を肌で感じる。
全く気が付かなかった。
手際良くボタンが外されていく。
上半身に触れる冷たい空気。
「や…自分でやる」
奏太の手を掴もうとするのに、ろくに力が入らない。
「腕抜いて」
あっさりパジャマが脱がされた。
下着のまま放置され、布団の中に潜ろうとしたのに制される。
「愛香、熱すぎ」
冷たいタオルが背中と首を行き交い、汗が拭われた。
新しい服を着せてもらえた。
汗の嫌な感触がなくなった。
「ボタン留めといて」
「…りがと」
「薬見てくる」
そう言い残して部屋を出て行く。