ぼんやりとした意識の中で感じる気配。
若干強引に腕が上げられて、何か冷たい感触がある。
「ほら、押さえて」
奏太の声で我に返ると、左腕を押さえるよう促された。
冷たい感触は、どうやら体温計のようだ。
指先に力が入らない。
そのままベッドに倒れたい。
肩を抱かれたのがわかった。
このまま寝てしまいそうだ。
「愛香」
何度か名前を呼ばれているのは分かるが、声が出せない。
意識が遠のく途中で、体温計の機械音が鳴った。
服の中に冷たい空気が入り込むのを感じると、また腕を上げられる。
体温計の表示を確認した奏太は、そのままどこかへ行ってしまった。
隣から消えた温もり。
今はちょっと、それが寂しい。