「お疲れさん。体調どう?」
頭に手を置かれて振り向くと、高島先生が立っていた。
「お疲れさまです…」
「昨日は眠れた?」
「はい、…特に問題なく」
しばらく目線が外れないので、思わず自分から避けてしまった。
「たまには飲み会避けたら?」
「でも…」
「蒼先生も"そこは緩くした"って言ってたけど、無理して行くことないって」
「過保護なところは全く変わってないですよ?」
本音が零れると、高島先生は苦笑いを浮かべる。
「心配故の過保護でしょ?」
「ただの過保護です」
「…何?喧嘩でもしたの?」
不思議そうに聞いてくる高島先生に返答しようと顔を上げたが、思わずサッと顔を伏せる。
「あ、噂をすれば」
高島先生が呑気に呟く先には、噂をしていた蒼がいた。
「何してんの?」
高島先生の影に隠れているつもりでも、呆気なくバレている。
背後に隠れていても、高島先生がわざと移動するせいで蒼には簡単に捕まった。
「季蛍?」
覗きこまれて、思わず顔を背ける。
「やっぱり2人、喧嘩でもしてるんですか?」
「…俺は記憶にないけど」
「季蛍が"相変わらず過保護だ"って」
「季蛍と一緒に俺の悪口?」
「いや、僕は言ってませんよ」
「俺に何か不満?今朝からおかしいけど」
とうとう腕を掴まれて、強引に目線を合わせられた。
「夜中一人で吸入してたの知ってるよ」
「…ッな、」
怖い顔で指摘され、思わずドキッとした。
絶対にバレてないと思ってたのに…。
蒼がいらぬ事まで高島先生の前で言ったせいで、高島先生の表情だって変わる。
「問題ないってさっき言ってたのに」
「…吸入くらい問題ないです」