助手席で窓の外をずっと眺めていた季蛍が、携帯電話を確認した。



「愛優から連絡来てる」





ポツリと呟く季蛍の顔色は、未だ青白い。







「吸入の袋どこ?…って」




メッセージを見た季蛍が少し慌てた様子で電話を掛け始めた。


気圧の変化も季蛍が喘息を引き起こしやすい原因になったのかもしれない。


最近聞かない愛優の喘息を耳にして、ふとそう思った。








「電話出ない」



心配したように携帯電話の画面を見つめている。









「苦しい思いしてたら可哀想だよ…」




窓の外を眺めながら

『まだつかない?』

と聞いてくる季蛍の顔には、不安が見られる。






自分も同じ苦しさが分かるからこそ、余計心配するんだろう。


あの苦しさで薬のない辛さが、きっと季蛍にはわかるから。





「もうすぐ」