「引き止めなかったんですか?」
「仕事の付き合い、とやかく言われたくないと思って」
「その結果これですよ」
「…ごめん」
最近季蛍に対しての規制を緩くしたことは、高島にあっさりバレていた。
緩くとは言っても、季蛍から『過保護』とキレられない程度のもの。
緩くしたつもりでも、季蛍は『過保護』と呆れていたが。
「季蛍に"子供じゃない"ってキレられたんだよ」
「蒼先生、季蛍の要求に弱いですもんね」
「……」
高島と店を出て、外のベンチを見て回った。
「あぁ、あれですか?」
高島が気がついたベンチに座る季蛍の姿。
「蒼?いつ来たの?」
季蛍の隣に腰を下ろすと、驚いたように目を見開いた。
「今。港に外にいるって教えてもらった」
「ごめん、ちょっと空気吸ってて」
季蛍の酷い顔色を見て、高島も怖い顔をする。
「車戻って吸入する?」
「それがいいよ、季蛍」
俺の提案にすかさず同意する高島だけど、季蛍はゆっくり首を左右に振った。
「元々すぐに帰るつもりで来たんだよ」
俺らを気にかけて首を振ったことを察したのか、高島が優しく季蛍に言う。
「明日もあるし早めに帰った方がいい」
「…いいんですか?」
「ていうか、そうして欲しい」
「わかりました…」
高島の配慮ある言葉で、季蛍も気持ちが軽くなったみたいだ。
「先に戻ってて、季蛍の荷物もあるからちょっと顔出してくる」
「わかりました」