「突然手術なんて大変だったでしょう?」


お母さんが取り皿に料理を盛り付けながら言った。


「私もびっくりしちゃって…」


「でも無事で良かったわ」







『陽ちゃんの分』



そう言ってお母さんが渡してくれた取り皿には、いろんな料理が乗せられている。




「ありがとうございます」


「遠慮しないで食べてね」








笑顔でいるのが精一杯で箸すら持てずにいたら、キッチンから港が戻ってきた。



「はい」


程よい柔らかさに煮込まれた卵粥が、湯気を立てている。







「無理しなくていいから」



スプーンを渡されると同時に、小声で港が呟いた。



「ありがとう…」









「結 おいで」



腕の中から結を抱き上げた港が、隣に腰を下ろした。



「無理すんなよ」


「…大丈夫だよ」


「顔色良くないから」


「……」






スプーンで少し器の中をかき混ぜると、卵の優しい匂いがする。



「いただきます」







スプーンですくって冷ましながら口の中へ。


卵の優しい味。やわらかい味。


どこで食べるお粥よりも、1番好きな味。







「美味しい?」







結にご飯を食べさせながら港が気になる様子で聞いてきたので、思わず何度も頷いた。



「ほんとに美味しい」


「よかった」