"早急に検査頼みたいんだけど"
高島から連絡が来たついでに訴えたら、仕事終わりでタイミングがよく来てくれるらしい。
ベッドで気絶するように眠った季蛍の様子を見ながら、診察室で残りのカルテを片付けていた。
__コンコン
ノックされた扉に返事をすると、高島が顔を出した。
「ごめん、引き止めて」
「いーえ。思ったより早く切り上げられたので」
「それは尚更ごめん」
「いいんです、僕がやることなので」
『家でもどうせ1人だし』なんて笑いながら、ベッドで眠る季蛍の側に椅子を寄せた。
「ちょっと診ますね?」
「お願いしまーす」
作業に戻ろうと背を向けようとしたら、高島が「おはよう」と声を掛けるのが聞こえた。
「…なんですか?」
声にならない声で聞いた季蛍に、高島は苦笑いを浮かべる。
「なんですか?じゃないです」
気絶するように眠っていたくせに、体を触られて目を覚ましたらしい。
「体痛む?…吐き気は?」
「…どっちも」
季蛍がここに来て眠る前"風邪なのか"と聞いたら「風邪だ」と答えていたが、風邪だと思っているのは季蛍本人くらいだろう。
なんて思いながらカルテの入力作業に戻って時計を見ると、21時半。
…夕飯は作るか。