_カチャン





静かに扉を閉める音が聞こえた。



『病院に行こう』なんて言われるかもしれない。





頭に響く痛みを耐えるように毛布を握りしめながら、眠っているフリ。



…なんにも聞こえないフリ。







だけど蒼の手は、毛布をそっと捲ってくる。





私の様子を伺うように。






「季蛍」





小さな声で名前を呼ばれてハッとした。




蒼の声じゃない…。








毛布を捲ったのは…




高島先生…?








余計嫌な予感しかしなくて、目をぎゅっと瞑っていたのに。




「起きてんだろ」



ってあっさり見破られていた。








「大丈夫?」



「……はい」



「そろそろ帰るけど。ちょっと顔見て帰ろうと思って」






まさかそのまま病院へ、だなんて言わないよね?




なんて悪いことしか考えられなくて、毛布に埋めた顔を離せない。




「心配なんだけど」



「…大丈夫です」



「顔はどこ?」



「…ないです」



「…何か警戒してんの?」



「……別に」



「あぁ、俺今日何も持ってないし。
別に診るつもりもないから。顔見るだけ」







…なんだ。





毛布から顔を出せば、高島先生は分かりやすく苦笑いを浮かべた。



「警戒してたの?」


「…少し」


「明日は季蛍と当直代わるよ」


「すみません…」


「疲れ……じゃなさそうだな」





ずっと目を合わせていたら、恥ずかしくなって逸らしてしまった。



「…疲れただけです」


「うん。でもそんなような顔じゃない」


「…。」