「季蛍の手料理は食べに来るから。その時また作ってね」
落ち込んだ様子の季蛍を励ますように高島が言うと、季蛍は顔を上げて頷いた。
「そう言えば友那さんは?」
「来年までアメリカだそうです」
仕事の関係上海外にいることが多い高島の奥さんは、なかなか帰国しないらしい。
「そっか。大変なんだな、高島も」
「僕もいっそのことアメリカに…」
高島はそう言いかけると、一度考えるように遠くを見つめた。
「…ま、無理ですけど」
「季蛍が寂しがるって」
「…はは、俺は友那より季蛍を優先ですか?」
冗談っぽく笑って言った高島だけど、寂しそうな表情は隠し切れていない。
「季蛍がご飯作ってやるって」
「ホントに?毎晩食べに来ようか、なんて」
冗談交えて盛り上がる俺らを横目に、季蛍は怠そうに毛布に顔を埋めた。