「もう少しだからね」
遠くの方で港の声が聞こえた。
冷や汗が出るまで耐え抜いて、限界もすぐそこだった。
「先生、手が冷えてきました」
看護師さんが冷静に呟くのが聞こえて、何のことかと意識を戻す。
看護師さんの手が私の手を優しく握ってくれているのがわかって、私のことを伝えたのだと理解した。
「もう終わる」
内視鏡が抜かれたと同時に、乱れ始めていた呼吸は一気に酷くなった。
「お疲れ様」
それでも港は冷静で、そのまま部屋の奥へ消えていく。
「陽さん、息はながーく吐いてくださいね」
看護師さんも冷静な口調で、ゆっくり体を起こしてくれた。
「大丈夫ですよ〜」
私の呼吸と重ねて、息を長く吐くように呼吸法を教えてくれる看護師さん。
真似しようとしても、上手く息が吸えない。
奥へ入っていった港がすぐに戻ってきて、様子を伺っている。
「頑張ったね」
頭をポンポンされたことはわかったけど、呼吸は整わなくて。
看護師さんの真似をして呼吸をしながら、港の白衣をぎゅっと握る。
不思議と安心する港の白衣。
背中をさすってくれる看護師さんの手。
何回か呼吸を続ければ、手の痺れも軽くなった。


