ようやく見つけた陽は、キッチンのすぐそばに座り込んでいた。
意識は……ある?
声を掛けてから肩を叩くと、反応はあるものの顔が上がらない。
「どうした?」
聞きながら頬に手を添えて顔を上げさせると、陽は強く目を閉じていた。
「トイレ…行こ……て、」
"トイレに行こうと思って"
だったらどうしてキッチンに?
と疑問に思ったその直後、陽はまた言葉をつなぐ。
「くすり…飲もうと…」
「薬?…なんの」
そう聞いても陽は答えないまま立ち上がろうとして、でもふらついて床に手をついて…。
「起こしてごめんね…」
結局陽は俺に謝って、その場をまた立とうとした。
「待て、立つな。…トイレ?ついていくから」
肩を抱いてトイレまで行くと、陽の手は空中を探るようにして取っ手を探す。
「1人で平気?」
トイレの扉を開けてあげると、陽は頷いて中に入っていった。