名前が呼ばれて先に部屋に入ると、白衣を着た奏太くんがいた。



「熱下がらなかったね」




問診票を手に持って声を掛けてきた奏太くんに、頷いて返事を返す。




「大分長引いて…」




奏太くんが口を開こうとした時、廊下から聞こえる夏来の泣き声。




「大泣き」




腕の中で暴れながら泣きじゃくる夏来を抱える蒼も、困った表情を浮かべて扉の前に立ち尽くしている。




「急に怖くなったか?」




夏来の背中を叩きながら宥める蒼は、看護師さんに促されて中に入ってきた。





「かえる…、うぅ…」




「んふふ、元気な声」




「…すみません、うるさくて」




夏来を見上げる奏太くんに謝ると、首を振って笑ってくれた。



「いいのいいの、みんなこうだよ」