「飲む…」
夏来がそう口を開いてから10分。
飲もうと頑張ろうとしている夏来の口にそっと薬を流し込む。
飲むように声を掛けるけど、口の端からタラタラと薬が溢れ出てきた。
「夏来もう一回」
新しく薬を足したカップをすぐに口元に近づけると、また口に含んでくれた。
けど、やっぱり飲み込めないまま出てきてしまう。
ワイシャツが夏来の口から溢れる薬で濡れていくけど、気にせずカップを口元に運ぶ。
「最後ね」
何日分 と決められた量が処方されている限り、1回で何回分も使い切ることは出来ないから。
夏来が落ち着くのを待ってあげる。
「ごっくん してね?」
夏来に優しく伝えると、何とか頷いて口を開いてくれた。
そこへ薬が流し込まれると、喉の動きで飲み込んだのがわかった。
口を開けさせて飲んだことを確認すると、頭を撫でてたくさん褒めてやる。
「も、いい。」
季蛍と俺からたくさん褒められて嬉しそうな夏来は、照れくさそうに笑っていた。