「夏来くん、1番のお部屋へどうぞ」
怖がる夏来へ配慮してか、優しそうな看護師さんが側に寄ってきて伝えてくれた。
看護師さんにでさえ「イヤだ」と言って近づかない夏来を見てか、「大丈夫よ〜、楽しいから」と笑ってくれた。
「かえる…」
「お兄ちゃんかえっちゃうの?お姉さんさみしいな」
優しく話しかけてくれる看護師さんに少し心が動かされたのか、怯えながらも蒼の腕の中から体を離す。
「あそこのお部屋で待ってるから、用意できたら入ってきてね」
頷きはしなかったものの、何となく納得しているように見えなくもない。
「じゃあお願いします。」
看護師さんが優しく笑って蒼と私にそう言ってくれると、部屋へ入っていった。
「夏来は男の子だもんな?頑張れるよ」
蒼が腕を引いて診察室の扉へ歩いていくけど、首をぶんぶん横に振りながらソファにしがみついて離れない。
「…誰に似たんだか」
ボソリと呟くのが聞こえたけど、聞こえなかったことにしておく。