夏来がふたつめのあめ玉をなめ終わったところで、ちょうど向こうから足音が近づいてきた。
ベンチに座っていた夏来もハッと顔を上げて、向かってくるその方向をじっと見つめている。
私もその背中を追って覗いてみると、蒼と高島先生が向こうから歩いてきた。
蒼の姿に気がついた夏来は、ぴょんぴょん飛び跳ねながら私の服の裾を掴む。
「パパ!」
咳が止まらないことを忘れたように飛び跳ねる夏来を、なんとか押さえて制止する。
「呼んでみたら?」
夏来にそう声を掛けると、「いいの?」とでも言うように私の目を見てきた。
「パパーって呼んでみたら?」
近づいてくる蒼に、夏来も耐えきれずまた飛び跳ねる。
「パパ!」
夏来がそう呼ぶと、蒼はその場で腰を低くして両手を広げた。
「おいで」
蒼との距離はほんの少ししかないけれど、夏来は懸命に走っていって しゃがんで待っている蒼の腕の中に飛び込んでいった。
「よく来たね」
病院に来たことをまず最初に褒めてあげる蒼は、腕の中の夏来をぎゅっと抱きしめていた。