戸締りを確認して玄関へ行くと、うずくまって動かない夏来がいた。
「夏来?」
咳が止まらない夏来の背中をさすって、声を掛ける。
「あめ玉ひとつなめたら?」
咳が止まるおまもり と言って夏来に渡してあるぬいぐるみの背中のポケットには、小さなあめ玉がいくつか入っている。
夏来もそれを探るようにぬいぐるみを掴んで、ポケットからひとつあめ玉を取り出した。
「それなめて病院行こ」
「ん」
こうして順調に家を出ることが出来るのも、きっと蒼に会えるから。
もしこのことを伝えなかったら、きっとこんな風についてきてくれない。
歩くと言って聞かない夏来と手を繋いで、駐車場まで歩いていった。