くだらないやり取りを続けているうちに、足音が近づいてきた。




「遅れてごめんね」




背後からそう声を掛けてきて、先に顔を出したのは港だった。




「季蛍さん、元気だった?」



「はい、もちろん」




季蛍の返事に港はにっこり笑って、また後ろを向いた。




「おいで」



港が手招きするのが見えると、足音がパタパタと近づいてくる。




「季蛍ちゃん!」



真っ先に季蛍の名前を呼ぶその声は、久しぶりに見る陽さんだった。



季蛍と俺を見つけると、交互に見つめてから



「…久しぶりです」



と優しく笑った。




「蒼と季蛍さんはよかったの?お休みの日に」



港が陽さんを奥のソファに座るよう促しながらそう聞いてくる。



「もちろん!私もずっと会いたかったので」





俺よりも先に季蛍がそう答えると、港も安心したように微笑んだ。






「よかったね、陽」




「ふふ、いつぶりだろうね?」




本当に嬉しそうな表情の陽さんを見ていると、元気そうで良かったと安心する。






「奥座れば?」



促す港の手を避ける陽さんは




「ごめん、ちょっとトイレ。すぐ戻ってくる」



と言って間をすり抜けた。




「あ、じゃあ私も行きます」







後を追うように季蛍がついていくと、港は小さくため息をついて向かい側のソファに腰を下ろした。





「本当に良かったのか?今日休みだったんだろ?」



陽さんの荷物を奥へと置いた港が聞いてくるので、迷わず頷いておく。




「予定はないから。むしろ港は良かったのか?」



「俺は大丈夫だよ…、特に陽が会いたいって聞かなくって」





そう言いながら笑う港は、また小さくため息をついた。



……無意識?




「陽さんの体調?」



「…ん?ちょっと…ね」





珍しい港の動揺に、大体の想像がつく。




「陽さん何かあった?」



「特に…今は。…あれでも今日は体調が悪い方」



「我慢して来てるの?」



「悪いって言っても熱はないから安心して?ただちょっと不安定なだけ」



ふふふ、と笑う港だけど。


本当は心配なんだろ?





「食事を取らないだけ」



港がため息と同時に呟くのを聞いて、思わず「あぁ」と声が漏れた。