「んねぇ、休みの港くん呼んでよかったの?」
隣でコーヒーをかき混ぜる季蛍は、俺を警戒した様子で聞いてきた。
「向こうが誘ってきたんだから会いたいんじゃないの?季蛍に」
「…ならいいんだけど」
ポケットからはみ出ているビニール袋に手を伸ばせば、警戒していた季蛍が手を払う。
「やめて」
「1人でコソコソ何やってたの?」
このカフェに来る前 薬局に寄った季蛍は、薬売り場でコソコソと怪しかった。
そもそも「薬局に用がある」と言った季蛍に「俺もついていく」と言った時、あんなに「来なくていい」と言われれば疑わない方がおかしい。
「何買ったの?」
「別に」
「はい、出して?」
「やだ」
「薬だろ」
「薬だよ?」
「…開き直るな」
「…蒼には関係ない」
「あぁ、高島に伝えておくわ」
「…それはやめて」
「俺には言えない事なんだろ」
「別に言えない訳じゃ…ない」
「だったら出せ」
「…ほんとしつこい、薬だったら何?」
「隠して買ったりするから気になるんだろ」
「別に隠してたつもりないもん…」
口を尖らせて不満そうな季蛍に、変なため息が出る。
「いっつも私悪いみたいな言い方するけど…蒼が過保護なだけだからね?」
そう言いながら薬局のビニール袋を取り出して、市販の薬をテーブルの上に置いた。
「隠そうとする意味がわからない」
「…別に意味なんてないもん」
数十秒間の沈黙の後、隣からボソボソと聞こえてくる。
「…ごめん」
「…俺も悪い」