「はい、背中」
高島に促されてくるりと体を回すと、季蛍とすぐに目が合った。
耳まで真っ赤にしながら、固まった表情に思わず笑ってしまいそうになる。
「…ゆっくり吐いて」
素直に従う季蛍がしばらく深呼吸を続けていると、服の中から手が抜けた。
「いいよ、終わり」
「ふふ、」
今更緊張が解けたような顔をして、すぐに高島の方を向く。
「出した薬は帰ったらすぐ飲むこと」
「はーい…」
それまで季蛍にあった高島の視線は俺へと移り、まるで何かを問いかけてくるかのようにじっと見つめてきた。
「ちゃんと飲むか見てろ」ってことだと思うけど。
『わかってる』ってつもりで頷くと、すぐにパソコンに戻っていた。
薬の見張り…って、子供じゃないんだから…。