病院につくと、蒼は誰かを探すように辺りを見回しながらナースステーションを通り過ぎていく。
「あ、いた」
前を歩く蒼の声が聞こえたと思ったら、視線の先には男性の姿がある。
…港くん?
一瞬そう思ったけど、蒼に声を掛けられて振り向いたのは…。
首に掛けられた聴診器に、心臓がドクンと跳ねる。
「あ」
私の姿に気がついた高島先生は、手を上げて手招きをした。
「先行ってるな」
私の腕を引いた蒼は、白衣を片手にナースステーションを後にする。
「季蛍おはよー」
「あ…おはようございます…」
「今朝しんどかった?蒼先生が言ってたけど」
「え…いや、昨日遅くて」
そう言うと高島先生は一瞬不思議そうな顔をして、すぐに納得したように笑った。
「違うよ、今朝。喘息の話してんだけど」
「ぜ…あ、大丈夫です」
無意識に一歩距離を取ると、腕を掴まれて引き戻された。
「薬飲み忘れ?」
「…帰るの遅くて」
正直に飲み忘れたことを伝えれば、触れるように軽く額を叩かれた。
「痛ッ」
「発作の引き金になるようなことはするな」
「…すみません」
「特にお酒」
「…蒼から聞いたんだ」
「1人の時は誰も助けてやれねーよ」
「わかってます…」