「…ただいま。」
家の玄関の扉を開けた所で、ちょうど時計の針が20時を指した。
「陽ー?」
陽のことで病院に連絡があってから、初めて家に帰宅する。
…酷い状態じゃなきゃいいけど。
リビングの扉を開けて中を覗くと、ソファに陽の姿を見つけた。
「ただいま」
「…あ、おかえり」
ゼリーを片手に俺を見上げた陽の額は、前髪で隠しきれていないガーゼと、赤く腫れた所が痛々しい。
「びっくりしたよ、俺」
額に手を伸ばそうとすると、体を引いて避けられた。
「ごめん…心配かけて」
「傷、痛む?」
「痛…まない、あんまり」
額に手を伸ばして笑う陽だけど、痛みはまだありそうだ。
「見せて?…手洗ってくるから」
「ん、いい。痛くないから」
スプーンでゼリーを崩しながら、小さく首を横に振った。
「…はは、待ってろ」
苦笑いを浮かべて陽の頭を撫でてやると、不満そうだった顔もすぐに嬉しそうな顔になった。
そこは隠しきれないのか…
と思うと、笑ってしまいそうになったけど。