季蛍より遅れて帰宅すると、夕食の準備が整っていた。
「ただいま。先食べてればいいのに」
時刻はとっくに23時を迎えたのに、手がつけられないまま食事が並んでいる。
季蛍はソファから「おかえり」と呟いて、すぐにパソコンに目を向けた。
「遅かったね」
夏来を抱えている愛優は、少し驚いた顔でリビングに来た。
「帰ってこないのかと思った…」
「あぁ、ごめん」
夏来と顔を見合わせて微笑む愛優に「季蛍は食べた?」と小さな声で問うと、首を振って季蛍の後ろ姿をじっと見つめた。
「げえーってした!」
正直にそう教えてくれる夏来に、愛優は慌てて唇に人差し指を当てた。
「吐いてた?季蛍」
「言わないでって言われてるよ…?」
「いいよ」
少し戸惑いを見せる愛優を見ていると、相当強く「言うな」と言ったに違いない。