しばらくしてまた扉が開くと、器を持った陽さんが戻ってきた。
「食べたの?」
港が陽さんに手招きをしながら問うと、気まずそうに下を向いて首を振った。
「…食べられない」
「最初からそう言えばいいだろ?」
「だって港怒るから…ッ」
興奮しそうになる陽さんの背中に手を回す港は「わかった」とだけ返事をして、陽さんを座らせた。
「怒るつもりないから」
陽さんの髪をそっとかき分けて、手を握る。
「食べられなくてもいいよ、しょうがないから」
「だってそしたら薬飲めな…」
陽さんも自分が食べられないことに納得がいかなくて、薬も飲めない焦りを感じているようで。
「一口食べれば飲んでいいから」
「だってそしたら港怒るから…ッ」
港の目を捉えて離さない陽さんに、港は小さくため息をつく。
「怒るつもりないよ」