「陽起きたかも」
何の音も聞こえなかった俺からしてみれば、港が眠っている陽さんのことを常に気にしているのは間違いないだろう。
「薬飲ませてもいい?」
「え?全然。お構いなく」
棚から袋を取り出してきたところで、寝室の扉が開く。
「…港?」
寝室から顔を覗かせた陽さんの第一声は、港のことを呼ぶ声。
「おはよ、陽」
さっきまであんなに悩んでいたのに、陽さんを目の前にすれば港だって違う。
「こっち来る?薬飲もうね」
昨夜から飲まなくなったと言っていたけど、今回は飲ませるつもりらしい。
陽さんがリビングに顔を見せると、港も手招きをして向かい側の椅子に促した。
「あれ…」
陽さんと目が合うと、少し笑顔を浮かべてくれた。
「体調悪い時にお邪魔しててごめんね」
「ん、いいんです」
首を左右に振った陽さんは、港に促された通りに腰を下ろした。
「蒼が持ってきてくれたフルーツ食べるか?待ってて」
陽さんの頭をクシャクシャと撫でて、港はキッチンへと姿を消す。