「陽さんに」
「…いいのに、ほんと」
季蛍の提案で買ってきたフルーツを手土産として持っていくと、首を振りながら押し返された。
「持って帰って」
「いいの、もらって。何もできない分これくらいさせろ」
「何もできないって…。
…ほんとありがとう」
納得いかない様子で受け取った港は、キッチンへと消えていく。
「適当に座ってて」
そう言われて腰を下ろすと、机の上には薬が散乱しているのが目に入った。
「散らかってて悪い…」
コーヒーを入れてくれた港は、薬を袋にしまって小さくため息をついた。
「陽さん?」
「…なかなか薬も効かなくてね」
港の疲れきった顔色が、陽さんの体調が良くないことを教えているようなもので。
「良くならない理由がわからない…」
無意識に本音が漏れているのか、そう呟きながら薬の袋を棚の中にしまった。