涙が零れそうになったのがばれないように、俯いて唇を噛みしめる。



子供じゃないのに採血くらいで涙出るなんて…情けないから。




だけど看護師さんに腕を固定されると、わかりやすく手が震えた。
 



その後すぐ腕に先生の冷えた手先が当てられて、「力抜いて」って声が聞こえた。




顔を上げれば針先が目に入って、余計腕に力が入る。







「そっち見ない」


強引に顔を横に向けられると、目の前が港の白衣でいっぱいになった。











「おしまーい」




先生が片付けを始めると、港は頭をくしゃくしゃ撫でて


「頑張った」と言ってくれた。





「細かいことは上野先生に診てもらえばいいから。ただ点滴はさせて?」



冗談っぽく言って笑う先生に、港は困った顔をしながら少し頷いていた。




納得しなくていいから…




なんて思いつつ、何だか嬉しかったりもする。






しゃがんで目線を合わせてくれた港は、手を取って握ってくれた。




「仕事戻るよ…?点滴の間は眠ってていいから」



「…ん、ありがと」