「やらないんだって?」
その声にハッとして顔を上げると、苦笑いをする先生の隣に白衣を着た港が立っていた。
私の側に寄ってきて目の前にしゃがむと、手に抱えていたバインダーを床に置いて
「やりたくないの?」
と言って笑った。
「………がんばりたいのに…がんばれない、」
港の優しい笑顔に思わず素直な気持ちが出ると、港は手を伸ばして髪をそっと撫でてくれた。
「なんだ、頑張りたいの?偉いじゃん」
「……」
バカにしないで…
っていつもなら言うはずが、言葉が出ないまま目を伏せた。
「…ふふ、お願いします」
ずっと背後で見守ってくれていた先生に港が声を掛けると、先生も笑っていた。
「上野先生が担当医になっちゃえば?」
冗談っぽく言って笑う先生は、トレーを持って側の棚の上に置いた。
「痛くしないって約束するから」
自信満々に言い切る先生に、港は笑って少し首を傾げた。
「…どーだか」
港が笑いながら小さく呟いたのを、私は聞き逃さなかったけど。


