はじめは仕事の話をしていたのに、いつの間にかプライベートの話題に移り変わっていた。
子どもの話に休みが取れない話、お互いの奥さんに困り果てる話。
共感できる部分が多いせいか、時間があっという間に過ぎていく。
「あ、港」
蒼が視線を向けた先。
ほんの少し開いたドアの隙間から、控えめに顔が出ている。
「どうした?」
「港…」
何かを伝えようとしているのか、強く服が引っ張られた。
「…きそう」
「ん?」
と聞き直しておいて、すぐに陽の伝えたいことを察する。
「ちょっと待ってて、我慢できる?」
慌ててキッチンへ向かおうとしたら、蒼がビニール袋を広げてくれた。
「ありがとう、助かる」
充血した目にうっすら涙を溜めながら、唇を強く結んでいる。
「陽、部屋の中に入ろうか」
ドアを閉め、その場に蹲る口元へ広げたビニール袋を差し出す。
「気持ち悪かった?気づけなくてごめん」
「んーん…ごめ…」