「陽ちゃん」
少し落ち着いた呼吸を整えながら壁に体重を預けていたら、再びお義母さんが顔を出した。
「いま港が来るから」
「え…」
「我慢させちゃってごめんなさいね」
ドアが閉まり、向こう側で話し声が聞こえる。
ひとりはお義母さん、もうひとりは…。
「陽」
再度開いたドアの隙間から、様子を伺うように覗いた顔。
会いたかった。
心細かった。
遅かったよ…
「ごめん」
背中に手が当てられる。
「港…ッ、なんで…?」
「気にしなくていい」
「お仕事は…?」
「大丈夫だから」
ずっと両手で握っていた吸入が回収された。
「自分で吸えた?」
「うん…」
「よしよし、えらいぞ」
「子供じゃないから…」