「季蛍」



久しぶりの出勤で、バタバタしていた季蛍をようやく見つけたのは夕方頃。



「なんか薬出たの?」



「……なんのこと?」



「高島から聞いたんだけど」



「……」



「貧血で倒れたら困ります、だって」



「ちょっと数値悪くて…」



「それでか」



「でも大丈夫…自覚症状ないから」



「あとで一緒に高島んとこ来て?」



「なんで…」



「話がしたい」



「…私は行かないよ?」



「病み上がりだから心配だし」



「心配しなくて大丈夫、診察も行かない」




くだらない言い合いを続けていたら、「まぁまぁ」と背中を叩かれた。



「港くん…」



「よかった、季蛍さんの元気な姿が見られて。俺のせいだから」



「港くん…声…」