「行ってくるよ」



出勤時間ギリギリまでそばにいてくれた蒼が、腕時計を確認した。



「悪いな、ほんと」



寝室のドア越しにそんな声が聞こえたと思ったら、再びドアが開いた。



洗面器から顔を上げると、蒼と入れ替わるように高島先生が顔を覗かせる。



「なん…で…」



首に聴診器をぶら下げている彼は、マスクをしてベッドサイドに腰をかけた。



「胃腸炎かなあ」



「なんで…?」



「ふっ、なんで 2回目」



微笑んだ先生が手のひらを見せた。



「触っていい?」



「…高島先生、なんでいるんですか?」



「はは、3回目のなんで」



いや、笑ってる場合じゃなくて…。



ど、どういうこと?