家具がすべて室内に移されると、残ったのは段ボール箱だけとなった。

こうなると、引越し業務の人たちは「ありがとうございましたー」と言って帰ってしまう。
あとは自分でやらなければいけないのだ。

「うー・・・・・・・・・・・・すっごい面倒なんですけど。」

誰も居ない部屋で一人呟いて、溜息を一つ零すと仕方なくダンボールに貼ってあるガムテープをびりびりと剥がして箱を開けた。











さらに時間は過ぎて、ようやくすべての整理が終わったころには体力は限界が迫っていた。

のろのろと風呂場へと足を進めて、浴槽の栓に蓋をする。

ボタンを押すとお湯が流れ出て浴室内を湯気で曇らせた。

お湯が溜まりきらないうちに服を脱いで浴槽に入る。

「・・・・・きっ・・・・・もちぃぃぃぃぃぃぃぃいー!!!!」

浴槽の中に沈みながら一声叫ぶとそうだ、とあるものを思い出した。

お湯の中から立ち上がり、浴室の中の鏡の取っ手を引っ張ると棚が現れる。

そこから「バスシャボン」という名称のものを取り出し、お湯の中にサラサラとバスシャボンを入れた。

淡いピンクの粉が溶けてお湯を少し染める。

またお湯をためている途中なので流れ出たお湯が溜まっていたお湯に打ち付けるように音を立てた。

しばらくすると、打ち付けられて振動が伝わった所為かおゆのなかにピンクの泡が出来てきた。

もう分かっただろう。

バスシャボンは入浴剤のようなものだ。

泡が立つので面白いと評判だったのをなんとなく買ってみたら本当にこれは面白いかもしれない。

「あー・・・・・明日は挨拶に行かなきゃなぁ・・・・・」

明日の予定を考えながら手に掬い取った泡を体に擦り付けて遊んだあとに、体や髪を丁寧に洗ってシャワーを浴びて浴室を出た。