「すいませーん、このクローゼット、どこに置きましょうかぁー?」

青い制服を着た青年がこちらに向かって聞いてくる。

「あ、それはですねぇーその部屋のベッドの向かいに・・・・」

重そうなクローゼットを抱えた青年に場所を伝えると「はーい」と一つ返事をして、クローゼットを運んでいった。

はい? 何してるんだって?

あーと・・・・・・引越しの最中なんですけど。

先ほどの青年は、引越しのお手伝いさんで三時間ほど前からせっせと家具をトラックから運び出して部屋に配置していっいくれている。

初夏の涼しい風が窓を開け放してはいるが物だらけでぐちゃぐちゃの部屋を通り抜ける。
「ふぃー・・・・・・」

軽く息をつくと、頬を伝う汗をタオルで拭い取って、ダンボールを運ぶ。

別に私は、結婚して旦那とともに一軒家に引っ越してきたわけではない。
...
一人で大学から近い、学生用のマンションに引っ越してきたのだ。

しかし、夏なんて・・・・とか思わないで欲しい。

仕方がなかったのだ。

今までは私が今、物を運んでいる部屋には住民が居た。

学生用なので、値段が手ごろというだけではなく内装も外装もともに清潔感のある綺麗なマンションだから住民が多いのだ。

だから、今まで満室で入れなかった。

が、つい最近三、四人ほどの住民がここを出たらしい。

それで部屋が空いたので私は喜んでここへと引っ越すことに決めたのだ。