「大丈夫だよ。もう、陽輝、心配し過ぎだって」


あはは、と笑って


「バイバイ」


私は電話を切った。


私が強がっているのを気付いている綺那は


「ねぇ、奈緒……。“早く諦めろ”なんて言わない。そんな簡単に諦められるなら、奈緒だってとっくに気持ちの整理をしていたと思う。だからさ、無理して、頑張って忘れようとしなくていいからさ、辛くなったらちゃんと言うんだよ?きっと、自然と忘れられて、辛くなくなる日がくるよ」


優しい表情で私を見る。


「綺那……。ありがとう」


そんな綺那を見て、私はにこっと笑顔を見せる。


好きな人、悠也に彼女が出来ました。

じゃぁ、私、諦めます。

なんて、そんな簡単に気持ちを変えられない。

だけど、現実はちゃんと受け入れなきゃ……


今日はたくさん泣いたから、明日は頑張って笑顔でいるぞ!


私は自分に、そう言い聞かせた。



その日の夜――…


萌実が家まで来てくれた。

私からはまだ萌実に何も言っていない。

だから、萌実は陽輝から話を聞いたのだろう。

萌実は私を見た瞬間、自分の事のように泣いてくれた。

そして、泣き止んだと思ったら、


「さっさと告白をしない奈緒が悪い!」


そう怒られた。


その夜、萌実に話を聞いてもらい、私はまたいっぱい泣いた。

泣いても何も変わらない。

だけど、萌実に話を聞いてもらい、いっぱい泣いた私は、放課後よりも少しずつではあるが、気持ちも落ち着いてきた――…