『大丈夫だ。今日は俺一人で帰るし』


陽輝はみなまで言わなくてもわかってくれた。


「あっ、そっか。悠也、栞と帰ったんだ」


だから、陽輝は“一緒に帰るか?”って言ってくれたのか。

落ち着いて考えたらわかるよね。

もし、陽輝が悠也と一緒に帰るのであれば、私に“一緒に帰るか?”なんて言わないから。


『あぁ……』


付き合う事になったのだから、一緒に帰れる日は、一緒に帰るだろう。

悠也が、とかではなく、普通恋人が出来たらそうするだろう。

それはそうだろうけど、悠也と栞が一緒に帰ったと知り、胸が痛くなる。


慣れなきゃな……


「そっか……。でも、大丈夫だよ」

『本当に、大丈夫なんだな?』


中学1年の秋に悠也の事を好きになり、想い続けて3年が経つ。

悠也は私の事を“何でも話せる友達”としか思ってないとわかっていても、悠也に好きな人が出来たとわかっても、私は悠也を諦める事が出来なかった。

ずっと、ずっと好きだった人。

私のショックも大きいだろう、それに落ち込んでいるだろうと陽輝は心配してくれている。

だから、何度も“大丈夫か?”って聞いてくるのだろう。


そりゃ、ショックだよ?

ショックだけどさ……

悠也も栞も同じクラス。

二人が一緒にいる所を見る度に、逃げ出すわけにはいかない。

だから、大丈夫……

しっかり自分にそう言い聞かさなきゃ。


また、私の目から涙が溢れ出しそうになる。