私達が材料を持って戻ると、もうバーベキューの準備が出来ていた。

石で作ったテーブルの上に食材を置くと


「奈緒、どうした?」


悠也が心配そうな表情で私の顔を覗き込む。


「何が?」

「“何が?”って。お前、涙目……」


あっ、ヤバッ!


「玉ねぎ切ったら、目にしみちゃってさぁー」


あはは、と私は笑って誤魔化す。


「そうなんだ。びっくりしたー。俺、奈緒が泣いてるの、初めて見たから」

「そうだっけ?中学の卒業式の時、泣いてたよ?」

「あっ、まぁ、そうだけどさ。そういうの以外で、奈緒が俺らの前で泣く事ってないだろ?それに、お前、いつも笑ってるから」

「それって、私がいつもヘラヘラしてるって事?」


私はムッとした感じで返す。

別に、悠也の言葉に怒っているわけでも、ムカついているわけでもない。

ただ、いつもの様に、冗談を言い合っているみたいに返した。

私がムッとした表情で悠也を見ていると


「ち、違うよ!」


悠也は慌てて否定する。