食材の準備を終えた私達は、悠也達のいる所へ戻った。

その途中、


「ねぇ、さっき、何であんな事を言ったの?」

「さっき?」

「どっかのクラスの子が悠也の事を狙うって言った時よ。奈緒、“いいんじゃない”って言ったじゃん」

「だって、私は悠也の彼女じゃないし」

「まぁ、そうだけど……。はぁ……」


綺那は、またため息を吐いて


「いいの?悠也に奈緒以外の彼女が出来ても」


私だって嫌だよ?

誰か他の女の子が、悠也の隣にいるなんて、見たくない。

本当は、想像もしたくない。


だけど、


「気持ちを伝えて、今の関係が壊れて、悠也のそばにいられなくなる方が怖いんだもん」


その事を考えると、自然と涙が溢れそうになる。


「奈緒、そればっかりじゃん。今まで仲良い友達だったんだし、関係を壊すのが怖い気持ちはわかるけど……。でも、このままじゃ、本当に誰かに悠也を取られちゃうよ」

「うん……」


私は綺那の言葉に俯いた。


中学の卒業式の日。

萌実にも同じことを言われた。

萌実も綺那も、私の事をすごく心配してくれているのはわかる。

でも……

ごめんね?

やっぱり、私には今の関係を壊す勇気がないんだ。

気持ちを伝える勇気がないんだ……