「じゃぁ、手作りチョコあげなよ。悠也、喜ぶんじゃない?」


まぁ、悠也は優しいから、例え、どんなチョコをあげたとしても私の前では喜んでくれそうだけど。


「私、チョコっていうか、お菓子なんて作った事ないんだけど……」

「じゃぁ、なおさら喜ぶんじゃない?奈緒の“人生初”の手作りチョコ」


綺那はそう言うけど……

私は一人暮らしをしているから、料理は出来なくはない。

だけど、人様に食べてもらえるような物は作れない。

“自分で食べる分だから、まぁいいか”ってくらいの料理。

しかも、この間、悠也の部屋で一緒にご飯を作ったのだけど、悠也の方が手際いいし、上手だった。


「料理も出来ないのに、お菓子なんて……。そんなの無理でしょ」


そう言って、私がため息を吐くと、


「なんで?料理が出来なくてもお菓子は作れる人いるよ?だって、レシピ見ながら、分量通りに作ったらいいんだから。簡単だって!」


綺那はにこっと笑う。


「うーん。でも、出来るかなぁー?」

「大丈夫だって!私でも出来るんだから。後で本屋さんに寄って、レシピ本探しに行こう!あっ!チョコ作るなら、ラッピングも買わなくちゃ!!」


綺那が作るわけじゃないのに、綺那の方がすごく張り切っている。


「でも、その前に自分のチョコ選ばなきゃ!」


綺那はまた目を輝かせて、目の前のショーケースの中のチョコを見ていた。