「なぁ、奈緒?悠也に会ってどうだった?やっぱり、悠也の事、忘れられないって思った?悠也の事……、まだ……好きだと思った?」


私は腕の中から顔を上げ、櫂を見る。

暗い車内でもわかる。

櫂の表情は、すごく悲しそうな表情をしている。


「……ごめんな。こんな事を言って……。俺、“悠也の事を忘れる為に利用していい”とか“今は恋愛感情の好きじゃなくてもいい”なんて言っていたのにさ。本当は今すぐにでも俺の事だけを見てほしいと思っている。それに、俺……、奈緒の事、誰にも渡したくないから“奈緒は俺の彼女”ってアピりたくて、哲の前で奈緒の事を抱きしめたり、みんなの前で奈緒の手を握ったりした」


私を見つめる櫂は、すごく辛そうな表情をしていた。


「ごめんな……。奈緒の気持ちを考えないで行動してしまって……」


櫂の事を傷付けたくなかったのに。

私は櫂にこんな悲しそうな顔をさせて、こんな事を言わせている。

櫂、ごめんね?

私に心の中に、まだ悠也はいるけど。

だけど……

だけど、私……