『奈緒は行きたいから、迷っているんだろ?』


スマホ越しに聞こえる高橋先輩の声は、すごく優しかった。


「でも……。“みんな”って事は、きっと悠也もいると思うの……」

『うん、わかってる。でも、高校を卒業してから陽輝達と会ってないんだろ?久しぶりに会えるんだから、行ってこいよ』


高橋先輩は、そう優しく言ってくれたけど、

本当に悠也に会って、私の気持ちは大丈夫なんだろうか

って、不安だった。

私がしっかりとしていればいい。

そう思うけど、でも、不安なんだ。


『でも、一つだけお願いがある』

「何?」

『奈緒は……、奈緒は俺の彼女でいいんだよな?』

「うん」


何でそんな事を聞くのだろう?


『俺の事、“先輩”じゃなくて、名前で呼んで欲しい』


付き合うようになってから、高橋先輩は私の事を“奈緒”と名前で呼ぶようになった。

だけど、私は今までずっと“先輩”と呼んでいたから、呼び方を変えるのが恥ずかしくて、今もまだ“先輩”のまま。

高橋先輩もきっと不安なんだと思う。

って、高橋先輩を不安にさせているのは私自身なんだけど……

だから、高橋先輩は“奈緒は俺の彼女でいいんだよな?”って、聞いたんだと思う。