3年になってからの伊原さんは、今までにも増して悠也にべったりだった。

2年の時までは部活の時だけだったけど、3年になってからは、昼休みには毎回私達のクラスまで来て、


「阿部くん!一緒にお弁当、食べよう!」


と、悠也の席に行く。

クラスの男子たちは、


「彼女?」

「伊原さんと付き合ってるの?」


悠也にいつも聞いていた。

その度に悠也は


「マネージャーだよ」


と答える。

だけど、


「でも、いつもお弁当一緒に食べてるじゃん」


そう友達には言われると


「断ってもしつこいから、諦めた」


悠也は、ため息まじりにそう答えていた。


私は、その会話を隣でいつも複雑な気持ちで聞いていた。

伊原さんの誘いを“諦めた”と言って、断らない悠也。

部活で邪魔されるのもよくはないけど、伊原さんは違うクラス。

教室にいる時くらいは、悠也と一緒にいたかった私は、それがすごく嫌だった。

でも……

私は、悠也の彼女じゃない。

ただの友達。

友達なだけの私が、“伊原さんと一緒にいないで”なんて言えるはずがない。