「俺……、高校の時、有沢の事が好きだったから」


えっ?うそ……


私は、なんて答えたらいいのかわからなかった。


「でも、お前、悠也の事しか見ていなかったもんな。だから、“俺の気持ちを伝えてもフラれるだろう”と思ってた」


私は黙って高橋先輩の話を聞く。


「俺らが部活を引退した後、“悠也が松下さんと付き合っている”って噂を耳にした時、俺、正直、チャンスだと思った。だから、有沢、お前に気持ちを伝えようと思った。でも、お前、辛そうな顔をしながら、ずっと悠也の事を見てんだもんなぁ。それだけ、悠也の事が好きなんだって思って、俺は諦めた」


悠也と栞が付き合うようになってから、私は悠也の事を見ないようにしていたのに。

私、無意識のうちに、悠也の事を見ていたんだ。


「さっきも……、松下さんと話している時の有沢……、すごく泣きそうな顔をしていた」


そう言うと、高橋先輩は掴んでいた私の腕をグイッと引っ張る。


「……せ、せんぱい?」

「俺、お前の泣きそうな顔を見るの、もう嫌だ」


そして、私は高橋先輩の腕の中にいた。