「二人の関係を壊したいとは思わないし、邪魔をしたいわけでもないよ」

「関係を壊す気はない。でも、悠也の事を諦められないんでしょ?」


私は「うん」と頷いた。


「なら……、無理して諦めようとしなくていいんじゃない?」

「えっ?」


綺那の言葉に驚いた私は、綺那の顔を見る。


「だって、諦めるって頑張ってする事じゃないでしょ。諦めようとして、諦められるもんでもないし。それに、好きって気持ちは頭でコントロールするもんじゃないでしょ。心で感じる事でしょ?だから、好きって想う気持ちは自由だよ。

ただ……、二人が一緒にいる所を見て、奈緒が辛く思う事もあると思う。だから、私は“辛くなったら話して”って言ったでしょ?それなのに、奈緒、一人で抱えて何も言ってこないんだから!!」


綺那は口を尖らしてムッとしていた。


「ご、ごめん……。ねぇ、私、悠也の事、頑張って諦めなくていいのかな?」

「頑張って諦めようとして、諦められていたら、今頃、“悠也の事が好き”なんて言ってないでしょ!それに、私は一度も奈緒に“頑張って諦めろ”なんて言ってないけど?」


そうだ。

綺那は“悠也の事を忘れろ”なんて一言も言っていない。

それは、私の気持ちを知っている人、みんな……

私の事を何も言わないで見守ってくれていたんだ。


「ありがとう」


私は綺那にぎゅっと抱き付いた。


「これからは、私達の前くらい素直になるんだよ?自分を作る事に慣れちゃダメだからね!」


そう言って、私の背中をポンポンっと子供をあやす様に撫でてくれた。