その日は運が
悪かったのかも知れない。

何時も通り、学校から帰って来て
鍵を開けてあい君ん家に
入ろうとした時だった。

「何してるの!?」

叫んだのは忘れ物を
取りに戻って来ていた母親だった。

これは、今日の夕飯は私抜きか……

家の中に連れ戻されたが
私は普通にあい君にメールしていた。

《緊急❢❢ あい君ん家に
入ろうとしたら母親にバレた……

マンションに着いたら、家に来て。
鍵は開けてあるから》

~送信~

二十分後、あい君が来た。

『早かったね』

『そりゃぁ、急いだからな』

私からメールをもらって
慌てて学校を出たんだろう。

想像したら少し可笑しかった。

「あなたは?」

『彼女が入ろうとした
家の家主ですよ』

まさか、本人が来るとは
思わなかったのだろう。

そして、私が隣人と
仲良くしてることも……

驚いてる母親を
気に止めずにあい君は
話を進めていく。

『とりあえず、自己紹介ですね、
花蕾愛緒生といいます。』


『 因みに右隣は俺の先輩で友人の
青山竜成といいます。
彼も幸奈と仲がいいんで、
よく、三人で夕飯を食べるんですよ』

サラっと竜君の自己紹介もしている。

『それから、彼女が家に
入ることは問題ありません。
鍵を渡したのは俺達ですから』

「分かりました。
幸奈が貴方の家に
入ろうとしたこと咎めませんが
例えそうだったとしても
年頃の女の子が男性の家に
上がって一緒に食事するというのはね……」

此処はキレていいだろうか……?

私が立ち上がり怒鳴りそうに
なったまさにその時、玄関から
竜君の声がした。

『幸奈、玄関の鍵の
開けっ放しは無用心ですよ…… 』

ちょうどいい。

竜君にも上がってもらお。

二人をリビングに残して玄関に向かった。

『竜君、おかえり。
帰って来て早々悪いんだけど、
今ちょっと厄介なことになっててね……』

*あい君ん家に入ろうとして
母親にバレたこと。

*あい君が急いで帰って来たこと。

*夕飯が出来てないこと。

*母親の言葉にキレかけていたこと。

『話は分かりました。
お邪魔します』

こんな時も冷静な竜君。

『話は幸奈から聞きました。
青山竜成です』

ずっと立っている竜君に
座るように勧めると
あい君と反対側の私の隣に座った。

なんか、部屋と同じ順番だなぁ。

左隣にあい君、
真ん中に私で右隣に竜君。

『愛緒生が話したと思いますが
私達は仲がいいですし、
部屋の鍵を幸奈に渡したのも
彼女が何時でも出入りして
いいという意味です。
それと、この際言わせもらいますが
幸奈が一人で家にいるのは
危ないと思いますが……』