『白澤ー!』

『・・・ん?』

声をかけられた方を向くと見慣れた姿が
パタパタと近づいてくる。

少し長めの前髪を、春風がふわりと
かき上げる。

『白澤!やっと見つけた!』
『なんだよ、啓太、そんな息切らして』

はぁはぁ、と荒く息をはいてる友人に
声をかける。

『おま…っ探したんだぞ!一人でいくなよ!』

『別に…勝手だろ、どこいくのも』

『冷たっ』

『…で、なんだよ?』

まだ、息も整わないうちに、はぁはぁ、と
言いながら目の前にvサインをだして
ニカッと啓太は笑って言った。

『俺たち、また同じクラスな!!』

『…。あぁ…』

『あぁ、って反応薄っっ!もっとこう、
ないのかよ!嬉しいとか!!なんか反応が!』

『お前が反応し過ぎなんだよ、たかが
クラスが一緒になったくらいで…。』

ふぅ、と少し呆れながら息をはいた。

『かーっ相変わらずクールな!
そういうトコが女子にモテるわけだな!』

『何言ってんだよ』

啓太は高校に入ってからできた友人だ。
どちらかというと、人見知りする俺に
対して、持ち前の明るさで初対面から
ズカズカと心のうちに入り込んできた。

最初は鬱陶しいところもあったが
俺にはない明るさやひょうきんさは
羨ましく思うところもあり
今では大事な友人だ。

…まあ、けして、見習いたいわけでも
ないけど。
啓太の裏表ない性格には、救われている。

『…なんだよ、喜んでんのは俺だけかよ。
俺はまた同じクラスで嬉しかったのにさー…。』

『………白澤は、嬉しくないの?』

『ん?』

俺より若干、背の低い啓太が、
無意識なのか、首をかしげて聞いてくる。

(…子犬みたいだ…。)

俺はどうも、啓太のこの仕草に弱い。

『…そんなことねーよ。嬉しいって。な?』

啓太の頭をクシャリとなでる。

『やめろよっせっかく髪、セットしたのに』

『ははっ』

『…はぁ、俺が女だったら惚れてるわ』

『あー?つか、同じクラスで嬉しいのは
俺じゃなくて、俺の
課題のノートを写せるかもしれないからだろ?』

『な!そんなことないって!純粋に、
また一年を共に過ごせるのが嬉しいのさー!』

『じゃあ、ノートは見せないってことでいいんだな?』

『それは困ります!白澤様!』

呆れた。
本日、二度目のため息。

季節は春。
外では桜が満開に咲いている。
暖かい風が時折優しく頰をかすめる。

高校2年生の季節がここから
始まるのだ。