~直音side~

その日は、放課後に担任に呼ばれて。
ゆずと付き合うようになってから、
帰りは、駅に近いゆずの高校で待ち合わせをするようになった。
俺は、正直女遊びが激しかったから、今でも連絡してきたり、寄ってきたりする女がいる。
その度に、ゆずは悲しそうな、悔しそうな、なんとも言えない表情(かお)をする。

ゆずは初恋すらまだだったらしく、何も知らない。
そんな純粋なゆずに、ハグをしたり、キスをしたりするのは俺でも緊張する。
でも、照れながら笑うゆずは、本当に可愛いんだ。

担任の長ったらしい話が終わって、急いでゆずの高校に向かう。
校舎から出た時に、連絡しようか迷ったけど、それほど遠くもないから、大丈夫だと思って連絡しなかった。



…もしもこの時、ゆずに連絡して、先に駅に行ってもらったりしておけば、未来はかわっていたか?





早くゆずに会いたい一心で走っていると、ゆずの校門前に人影が見えた。

「ゆずー!」


ブォォォォオオオオオン!!!!


俺の声をかき消すようにエンジン音が鳴った。


ドンッ



嫌な音がした。

俺の横をバイクが通り過ぎていく。
呆然と、校門を見つめた。


…ゆず。



「ゆず?」



…まさか。
そんなはずない。
今、俺の目の前で、血を流しているのがゆずだなんて。

それの近くに歩っていって、がくんとひざをつく。



「…ゆず?」



動けない俺と、動かないゆずを夕焼けと夜空が混ざった紫の空が見つめていた。