あれから数年が経って。


私は思い出の展望台にいる。


赤い、オレンジの夕日が眩しい。


思わず目を細めると、


後ろからふわりと、力強く抱き締められた。



聞こえた、気がした。


『ゆず』って。


もう、音なんて聞こえないはずなのに。


『好きだ』って。


手をほどいて彼と向き合う。


『直音君』と。


私には音にならない声だけど、


届いたかな?


涙が溢れて泣き笑いになる。


直音君は私を抱き締めてくれた。


よかった。


届いた。


私も強く抱き締め返す。





















『私も、好き。』